脳梗塞とは
脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり、脳の血管に血栓(血の塊)が詰まることで発症します。
脳の血管が詰まる事で、その先に酸素や栄養が運ばれなくなり、脳細胞が壊死してしまう怖い病気です。
寝たきりや、介護を必要とする原因の第1位のとても怖い病気です。
- 歩けなくなる
- 片方の手足が動かなくなる
- 会話が理解できない、言葉が出なくなる
- 尿意・便意がわからなくなり、オムツをつけることになる
等の後遺症があります。
あなたや、あなたの大切な家族の人生を狂わせる病気です。
私は理学療法士というリハビリの仕事とを16年以上していて、今も病院に勤めています。
私が今までに得た知識や経験をあなたにお伝えすることで、脳梗塞の危険な前兆を見逃さないように、また、前兆に気づいたら迅速に対応できる手助けになればと思います。
脳梗塞は時間との勝負の病気
脳梗塞を発症しても、すぐに病院を受診して適切な治療を受ければ、歩けなくなる、麻痺が残るなどの後遺症に悩まなくて済むかもしれません。
脳梗塞は、動脈硬化などにより、血管に血の塊である「血栓」が詰まる事で、脳に酸素が供給されなくなって発症します。
一般的には4.5時間以内に血栓を溶かす薬で治療することが多いです。
詰まった血栓を取り除く時間が早いほど、後遺症のリスクが低くなります。
裏を返せば、治療までの時間が遅くなればなるほど後遺症のリスクが大きくなり、後遺症の程度も大きくなります。
血栓によって脳に酸素が供給されないわけなので、治療が遅くなれば、脳の細胞が死んでしまう範囲が大きくなってしまいます。
私も理学療法士として、脳梗塞の方のリハビリを何百人としてきました。
重度の麻痺によって、歩けなくなったり、寝たきりになったりした方のリハビリにも携わってきました。
本作品を通して、脳梗塞の前兆と脳梗塞の判断方法を知ることで、あなたや、あなたの家族が脳梗塞になった時に迅速に対応ができるようになってください。
脳梗塞のリスク因子5選
どれか一つでも当てはまったら要注意です。
健康診断で要注意と先生に言われても
- 「症状として出てないし、大丈夫だろう」
- 「去年も同じこと言われたけど何ともなかった」
- 「仕事(家事)が忙しくて、それどころじゃない」
と思われて、そのまま放置される方が比較的多いです。
今までが、運が良くて発症していなかっただけかもしれません。
脳梗塞を予防するためにも、食生活の見直しと運動はとても重要になります。
40代で老化の速度は加速する
では、どのような食生活、運動をしたら良いのか
ずばり、
- 食物繊維を多く摂る
- 白いタンパク質を摂る
- 砂糖等の糖質を避ける
- ジャンクフードを避ける
- 有酸素運動を週3日する
等が挙げられます。
40代は、ある意味人生のターニングポイントです。
40代から食生活を見直す人や運動を継続的に行えるかでその後の健康寿命が変わります。
老化しないカラダ作りをすることで、脳梗塞予防はもちろん、いつまでも若々しく健康的なカラダに近づくことができます。

一過性脳虚血発作(TIA)とは
脳梗塞には前兆が起こる場合があります。
これを一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれています。
TIAは、血管が狭くなっていたり、血栓が一時的に血管に詰まっても、また詰まりが取れて血流が再開したことで起こります。
TIAの症状は、持続時間が5~10分間程度が多く、おおよそ1時間以内に消失してしまうことが多いです。
症状が治まるため、「大丈夫」と思ってそのまま放置する方が比較的多い印象です。
しかし、50人に1人が2日以内に脳梗塞を発症するというデータがあります。
脳梗塞の前兆である一過性脳虚血発作(TIA)と診断された場合、血液をサラサラにする薬を処方してもらいます。
血液をサラサラにすることで血液が詰まるのを防いでくれます。
血液をサラサラにする薬で、脳梗塞になるリスクが1/5になったというデータがあります。
適切に対処することで、脳梗塞になるリスクがぐっと下がります。
このTIAは脳からの最終警告でもあります。
今回は、脳梗塞の初期症状・前兆であるTIAの症状を5つ紹介します。
脳からの最終警告を見逃さないようになって下さい。
【見逃し厳禁】脳梗塞の初期症状・前兆①
- 呂律(ろれつ)が回らない(構音障害)
- 言葉が上手く出ない(失語症)
などがあります。
構音障害とは、唇や舌の筋肉が麻痺して上手く「言葉」を構成できない障害です。
失語症には、感覚性失語と運動性失語の2種類があります。
- 感覚性失語:言葉が出ない、長い文章が理解できない
- 運動性失語:言葉は理解できるけど、単語や短文しか話せない
があります。
唇や舌に麻痺があるか確認するテスト
- 笑顔やあっかんべーをして、左右の顔に差が無いか確認する
- 「パ・タ・カ・ラ」と3回言ってみて、発音のしにくさを確認する
失語症の判断は専門家でないと難しいのが現状です。
個人的に確認している方法として、
「あなたは、昨日の午前中になにをしましたか?」と質問をし、復唱と返答をしてもらいます。
- 言葉は流ちょうか
- 明確に復唱できるか
- 明確に返答できるか
で確認します。
聞き取りにくさがあったり、理解できていないなど、怪しいと思ったら病院受診をして下さい。
【見逃し厳禁】脳梗塞の初期症状・前兆②視覚障害
- 物が二重に見える(複視)
- 視野が左右半分しか見えない(半盲)
- 片方の眼が急に見えなくなり、数分でまた見えるようになる(一過性黒内障)
「目に何か異常が起きている?」と思う人が多いのですが、脳梗塞でも目に症状が出ることがあります。
なぜなら、目から入る情報も脳が処理するからです。
脳の一番後ろに後頭葉があります。
後頭葉は目から得た情報(視覚情報)を処理している部位です。
この後頭葉に脳梗塞が起きると、先程お伝えした、物が二重に見えたり、見える範囲が狭くなるといった症状が現れます。
特に、片方の眼が急に見えなくなって、しばらくするとまた見えるようになる(一過性黒内障)は、脳梗塞の前触れといわれている危険なサインです。
症状が出た時間を確認し、すぐに受診をして下さい。
【見逃し厳禁】脳梗塞の初期症状・前兆③運動麻痺
- 片足ばかりつまづく
- コップやお箸が上手く持てない
- 片側の顔、腕、足に力が入りにくい
- 片側の腕や足が思ったように動かない
脳梗塞の中で有名な症状ですね
本来、脳の運動野から電気信号(指令)が出て脊髄神経を通り、腕や足、顔の筋肉にその信号が届くことで、動かすことができます。
しかし、脳梗塞が起きると、運動野からの信号が梗塞部位でストップしてしまい、動かない、動きにくいという症状が現れます。
また、脳梗塞は両手または両足に症状が出ることは少なく、片側だけに出ることが殆どです。
なので、右手・右足に麻痺が出る、左手・左足に麻痺が出る、といった症状です。
腕や足が「まったく動かない」といった症状は、大きな血管が詰まったり、運動を司る神経回路が障害された場合に起こります。
片方の指先が動かない、動かしにくさを感じた場合は、小さな血管が詰まった可能性があります。
これを「ラクナ梗塞」といいます。
脳の血管は太い血管から細い血管へと枝分かれしていて、枝分かれした先で血管が詰まる後、脳細胞が壊死してラクナ梗塞が起きます。
小さな梗塞でも、起きた場所によっては重大な後遺症になる事もあります。
症状が出たら、必ず病院受診をして下さい。
運動性麻痺があるかの簡単なテスト
- 両手を同時に「前ならえ」をして10秒キープします
片方の腕が上がらない、またはキープできずに下がってしまう場合は、脳梗塞の前兆の可能性があります。
【見逃し厳禁】脳梗塞の初期症状・前兆④感覚麻痺
- 触覚:触っている、触られている感覚が分からない
- 温痛覚:冷たい、熱いの感覚がわからない、痛みがわからない
- 位置覚:目を閉じた状態で、左右の手または足を同じ高さに挙げたつもりが、明らかに差がある
このように、皮膚や関節からの感覚情報が脳に届かない、感覚障害も脳梗塞では少なくありません。
この感覚麻痺も左右どちらかの手や足にだけ出ます。
感覚麻痺の簡単なテスト
- 両手同時に冷たいコップを持ってみる
- 両手同時にトゲトゲボールを持ってみる
- 両足同時にお風呂のお湯につけてみる
左右同時に行うのがポイントです。
この時に左右差を感じたのであれば、前兆の可能性があります。
【見逃し厳禁】脳梗塞の初期症状・前兆⑤バランスの障害
- 体がグラついて立っていられない
- 片足立ちができない
- 歩くとふらつく
これは小脳で脳梗塞が起きている可能性があります。
小脳とは、平衡感覚や力の入れ具合の調整を行う部位です。
小脳梗塞かどうか判断するテスト
- 指鼻指(ゆびーはなーゆび)試験
- 向う脛叩打(むこうずねこうだ)試験
- 継ぎ足歩行(綱渡りをするように一直線上を歩く)
などがあります。
指鼻指試験
- 患者は人差し指を立てます。
- 検査者も人差し指を立てます。
- 患者は検査者の人差し指と自分の鼻先を交互にタッチします。
※左手で5往復程度、右手でも5往復程度行い、左右差を確認します。
患者の指が検査者の指や自分の鼻先をタッチするときに、指がグラグラと大きくぶれる場合は小脳梗塞の可能性があります。
向う脛叩打試験
- 仰向けに寝ます。
- 片足のかかとで反対足の脛(すね)の同じ個所をコンコンと叩きます。
※左足で5回程度、右足でも5回程度行い、左右差を確認します。
脛を上手く叩けない、叩く場所が一定にできないなどの症状がある場合は小脳梗塞を疑います。
継ぎ足歩行(綱渡りをするように一直線上を歩く)
綱渡りをするように一直線上をゆっくり歩きます
小脳梗塞があると、バランスを崩して歩けない、足が出なくなります。
耳の三半規管も平衡感覚に重要な役割を担っています。
めまいの病気、メニエール病が有名ですね。
小脳の脳梗塞か、三半規管の問題なのかは一般の方には判別不可能だと思うので、自己判断せずに、病院受診をして下さい。
私が担当した患者さんの声
実際に私が担当した患者さんの声です。
自分だけは大丈夫という自信があった
まさか自分が脳梗塞になるとは思わなかった
親も兄弟も脳梗塞の人はいないから予想外だった
介護のために娘が仕事を辞めることになって、本当に辛い
歩けないから神社やお寺などの段差が多い所に旅行に行けない
多くの患者さんが脳梗塞の症状に苦しみながらも、リハビリを一生懸命に頑張っていました。
それでも、脳梗塞で大きな後遺症が残ることがあります。
あなたや、あなたの大切な家族の人生を大きく狂わせてしまう可能性がります。
食生活の見直しと運動でそのリスクは軽減できます。
今から行動をしていきましょう。
脳梗塞の簡易評価「FAST」
最後に「脳梗塞かも」と思ったときにしてほしい行動「FAST」を紹介します
FASTとは
F face 笑顔を作ってみる、あっかんべーをするなど、表情の筋肉を使い、左右差があるか確認する
A arm 前ならえをする 左右の手で挙げる高さに差があるか見る 目を閉じて上げてみて、目をけて確認するのもよい
S speech 「パ・タ・カ・ラ」と言ってみる。言葉が思い出せない、ろれつが回らないなど
T time F A S を確認し、症状があったら、その時間をメモに取り「119」に電話して、その時間を伝える。
脳梗塞は、発症させないこと、つまり予防が大切です。
10年後20年後も夫婦で海外旅行に行ったり、笑顔で子供や孫と走ったり、友人とカフェに行って昔ばなしに花を咲かすためにも、脳梗塞の危険な前兆とFASTをしっかりと覚えておいてください。
最後に
最後まで見てい頂いてありがとうございます。
医学の世界に「絶対」はないため、治るとも治らないとも言えないのが実情です。
※余談ですが、治る・治らないは「診断」になり、医師の権限になります。
理学療法士にはその権限が無いため、答えることができないのですが、よく質問されます。
今回も後遺症と言っても大丈夫かと思うくらいですが、それくらいインパクトが無いと伝わらないと思うので、あえてそう言わさせていただきます。
今回の内容が少しでもあなたのお役に立てれたのであれば幸いです。